第一章 出会い

3/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
振り向いた彼女は、誰が見ても美人で、だけど肌が白く、今にも消えてしまいそうな儚げな少女だった。  僕は息をするのを忘れたように、彼女に見入っていた。 「桜がね、綺麗で、動きたくないなぁって」  彼女は、はにかんだように笑いながら言った。  笑った顔は、最初の印象と違い、とても可愛いらしい。そんな彼女に、僕の顔は赤く染まった。 「で、でも、にゅ、入学式始まっちゃうよ!」  少しどもりながら、僕は言った。 「うん……。 でも私入学式出ないから」  彼女は少し寂しげそうな顔をした。 「それより、君は大丈夫?」 「……え?」 「時間」  僕は言われて、腕時計を確認した。 そして、青ざめた。 時計の針は、もう8時55分を指していた。 「や、やばい!! 遅刻だーーー!」 このとき、全速力で駆け出した僕の後姿を、彼女が苦しそうに見つめていたことなど気づきもしなかった  
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!