第二章 始まりの音

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 今日の体育の授業は、バスケだった。  僕はどちらかというと、スポーツ全般得意ではない。 そんな僕に、容赦なくボールが飛んできた。  恥ずかしいことに僕は、飛んできたボールを顔面で受け取り、保健室へと向かうことになった。 われながらどんくさいと思いながら、保健室の扉をノックした。 ところが、中からは何の反応もない。  僕は、失礼しますと、声をかけ保健室の中に入った。  中に入ると、案の定、保健の先生はいなかった。 辺りを見渡し、近くにあったティッシュを鼻の中につめた。 とりあえずこんなんで良いだろうと、出ようとしたとき、ふと頭の中に彼女のことが浮かんだ。そういえば、彼女は保健室で休んでいるはず。 誰もいないのをいいことに、僕はベッドの方へと足を向けた。  室内にベッドは二つ、ひとつだけカーテンが閉まっていた。 僕はそっと近づき、隙間から中を覗いた。  彼女の青白い顔は、一瞬死んでいるように見える寝顔だった。 僕は、少し怖くなり、眠る彼女にそっと近づいた。 寝息を立てている事に安堵し、彼女の顔を見つめた。顔色は良くないが、あどけない顔で眠る彼女に、僕の心臓がトクンと音をたてた。 そして、心の中ではダメだと思いながらも、彼女の顔に自分の顔を近づけた。 あと少しで唇がくっつく瞬間、彼女の目がゆっくりと開いていった。 僕は、驚き仰け反った。ヤバイ、ヤバイと心の中で警告音が鳴る。先程とは、違う意味で、心臓が音をたてている。
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