第二章 始まりの音

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ふっと彼女は目を覚ました。とろんと眠気の残った声で話しかけてきた。 「……誰?」 どうやら今の事は気づいていないらしい。僕はそう思い答えた。 「あ、あの、宮園さん。 具合大丈夫?」 「……篠崎君?」 彼女の目と僕の目が合った。ようやく誰が話しかけているのかを把握したようだ。 「……なんで、ここに?」 「えっと、体育で鼻血出ちゃって……」 恥ずかしくて、顔を赤くしながらそう告げた。 すると、彼女はクスッと笑った。 「篠崎君こそ、鼻血大丈夫?」 クスクスと彼女は笑いながら、身体を起こした。 「う、うん」 笑われた、恥ずかしすぎる。彼女と入学式以来、きちんと話すのに、なんて事だ、と僕は少し落ち込んだ。 「あ、でも、もう血止まってるね」 と、彼女は安心したように、柔らかい笑顔を見せた。 そして僕は、急に2人きりだということを思い出し再び胸がドキドキし始めた。 「み、宮園さんの方こそ、具合はどう?」 少し緊張しながら、僕は聞いた。 「うん、もう平気」 彼女の青白かった顔色に、少しだけ赤みが戻っていた。
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