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あれから宮園さんは、体調がよくなったのか、授業に戻ってきた。
その日の放課後、高志君は部活で、僕は帰宅部なので一人で帰ろうと、校門を出た。
桜が咲く通学路、彼女が言っていたとおり、もう散り始めている。そう思ってふと立ち止まっていると、後ろから声をかけられた。
「篠崎君」
僕はいきおいよく振り向いた。
そこには、柔らかな笑みをうかべた宮園咲良がいた。
「あ、宮園さんも今帰り?」
「うん。 そういえばここで、私たち初めて会ったね」
「え、僕のこと覚えていたの?」
僕はびっくりして聞き返した。あのあと、特に声をかけられなかったから、てっきり忘れられているものだと思っていた。
「もちろん。 まさか一緒のクラスになるとは思わなかったけど……」
「うん、僕もびっくりした」
お互いくすっと笑いあった。
彼女が途中まで一緒に帰ろうと、言ってくれたので僕たちは歩き出した。
夕日に染まった桜並木の中、僕は舞い上がりながらも、彼女といろいろなことを話した。
そして、分かれ道になり、寂しい気持ちを隠しながらも、さよならを告げた。
「えっと、じゃあ、僕はこっちだから……またね、宮園さん」
「咲良でいいよ」
「え?」
「名前。 咲良って呼んで。 私も陽汰って呼んでもいい?」
「も、もちろん!!」
僕は嬉しすぎて、興奮気味に答えた。
「じゃ、陽汰、また明日ね。 バイバイ」
と言いながら、彼女は帰って行った。
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