第二章 始まりの音

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 あれから宮園さんは、体調がよくなったのか、授業に戻ってきた。  その日の放課後、高志君は部活で、僕は帰宅部なので一人で帰ろうと、校門を出た。  桜が咲く通学路、彼女が言っていたとおり、もう散り始めている。そう思ってふと立ち止まっていると、後ろから声をかけられた。 「篠崎君」    僕はいきおいよく振り向いた。  そこには、柔らかな笑みをうかべた宮園咲良がいた。   「あ、宮園さんも今帰り?」 「うん。 そういえばここで、私たち初めて会ったね」 「え、僕のこと覚えていたの?」  僕はびっくりして聞き返した。あのあと、特に声をかけられなかったから、てっきり忘れられているものだと思っていた。 「もちろん。 まさか一緒のクラスになるとは思わなかったけど……」 「うん、僕もびっくりした」  お互いくすっと笑いあった。  彼女が途中まで一緒に帰ろうと、言ってくれたので僕たちは歩き出した。  夕日に染まった桜並木の中、僕は舞い上がりながらも、彼女といろいろなことを話した。  そして、分かれ道になり、寂しい気持ちを隠しながらも、さよならを告げた。 「えっと、じゃあ、僕はこっちだから……またね、宮園さん」 「咲良でいいよ」 「え?」 「名前。 咲良って呼んで。 私も陽汰って呼んでもいい?」 「も、もちろん!!」  僕は嬉しすぎて、興奮気味に答えた。 「じゃ、陽汰、また明日ね。 バイバイ」 と言いながら、彼女は帰って行った。
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