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「魔法のチョコレートって、……あの?」
「はい。あの、魔法のチョコレートでございます」
「うっそ」
堪えきれずに、笑ってしまう。
改めて、店をよく観察する。見れば見るほどシンプルな作りの店だった。カウンターには四角いアルミの箱が置かれ、その中に、丸い形をしたチョコレートが、裸のまま並んでいる。
これが、魔法のチョコレート。
値段を見て驚いた。
恐ろしく高い。目玉が飛び出るほど、とうのは大げさだけれど、一粒で、私の予算の三分の二は持っていかれてしまう。
「お客様、魔法をご所望ですか?」
大まじめに、こんなことを言うものだから、私は益々笑ってしまった。
「魔法って、本気で言っているんですか?」
「勿論ですとも。魔法のチョコレートは、食した人を意のままにできるチョコレートでございます」
「私、知ってますよ。それ都市伝説ですよね」
「さあ。そうお思いならそうなのかもしれません。けれど、ここで出会ったのも何かの縁ですし」
そう言って、店員はにこりと微笑んだ。
「是非、お味見を」
差し出されたチョコレートを思わず受け取ったのは、微かな期待と好奇心だった。
「どうぞ」
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