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「あんこ、今日から俺、この店を手伝わせてもらう事にした。学校のない日だけだけどな」
「え、引越しは?」
「通学はちょっと大変だけど。頑張って家から通うよ」
「でも、部屋の荷物まとめてたんじゃ……」
「あれは高校で使ってたのを片してただけ。お前もそういう事くらいはしただろ?」
「そ、それじゃあ……」
「あぁ、4月からもまたよろしくな。俺、和菓子も勉強するし、頑張るから」
「なんで……それならそうと、早く言ってくれれば良かったのに」
「あんこをビックリさせたくてさ。サプライズだよ、サプライズ」
智也はそう言って笑ったが、私は声をあげて泣いてしまい、それどころではなかった。
それからしばらくの時間が経ち――智也はショコラティエではなく、和菓子職人を目指す事になった。
高校3年のホワイトデーに智也が作ってくれたチョコレート。それは私と智也だけが味わった、2人だけの世界一のチョコレートだった。
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