0人が本棚に入れています
本棚に追加
雨が降っていた。
風は強くない。窓を叩くほどの強い雨でもない。軽いノイズのようなささやきじみた音を出す程度の雨だ。
そんな雨が、今日は降っている。深夜二時半の静寂の中に静かに雨音を溶け込ませている。
窓に頭をもたせ、目を閉じる。窓越しに雨の匂いを感じるように思える。
少しずつ意識が雨音に溶け込んでいく。
こんな雨の日は、昔を思い出す。
あの日も、雨が降っていた。
僕はよく本を読んでいた。心の隙間を埋めるように、毎日毎日ページを捲っていた。
とにかく、何かをしたいという気持ちが強かった。若い頃特有の思い込みから湧いてくる感情だったのだろう。そんな強い感情を抱きながら、なにをすればいいのか分からなかったし、どうすれば何かができるのかというやり方も知らずにいた。僕は物語に入り込むことで、登場人物とリンクし、その欲求を満たしていた。それが僕の心の隙間を埋めてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!