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小学生のころも、中学生のころも、僕の思い出はすべて本と共にあった。
高校に入学してからも、最初の一年と最後の一年はすべて物語と結びついている。どんなクラスメイトがいたかとか、どんなことを学んだとか、そういうことは何も思い出せないけれど、どの本をどの時期に読んだかという事だけは鮮明に思い出せる。どの出版社から出ていた本かということさえも正確に記憶している。すべてを確かめたわけではないけれど、本屋で確認した限りでは記憶は正しかった。
そんな僕の記憶が、本以外のものと結びついている時期がある。それが高校二年の一年間だ。
濃密な時間なんてものは存在しないと思っていた。だけど、あの瞬間感じていた鼓動だとか、チョコレートのような甘ったるい時間はとても濃いものであったのは間違いない。
出来事の始まりは、一月十八日のことだ。
普段僕は図書室を利用しない。本は自分で買うか、休日に図書館で読むことにしている。だから、その日は特別だった。
今すぐ読みたいけれど買うにはそこそこの値段の本があった。それはいわゆる学術的な本で、もしかすると図書室にあるんじゃないかと考えた。
図書室にはほとんど人がいなかった。席に座っているものはみな机にノートを広げており、読書ではなく勉強をしていた。
僕は目的の本を探し、図書室の奥へと向かった。哲学やらなんやらの分厚かったり難解な本は最も奥の棚にある。
入口周辺から死角になったその場所はほとんど人がこないのだろう。埃のにおいが濃かった。
そんな埃と薄暗さの中に、彼女はいた。
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