木ノ下よりお届けします。

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「いい眺めねー」  僕の頭上から声がする。 「そうですねー、とてもいいですねー」  僕は見上げながらそう応じた。  ホントいい眺め。  今日は白ですか。桜色のリボンが可愛いですね。  ガッ。 「ってぇ!」 「どこを眺めてるの君は」  僕の視線を察知したらしく、彼女──桜城 舞桜美(おうじょう まおみ)は僕に靴をお見舞いしてくれた。革で強化されているローファーは意外と痛い。特に爪先部分が当たると痛い。  因みに僕らは今、学校の中庭にいる。  二月の上旬。  この時期に咲き始める桜の木、その上と下にいる。  上には彼女。  下には僕。  ……………………。  これがホントの下僕とか思った人は帰ってよし。  僕らがまとっているシチュエーションは、放課後の校舎、その、夕暮れに染まる次第を背景に各々好きな本を手にしているところだ。  冒頭のセリフは、桜の木に登りきった直後の彼女が言ったものだ。地上と木の上とでは景色が違って見えるのだろう。 「アタシはこのままここで読むけど君は?」  横に伸びた太い枝に腰を落ち着けながら舞桜美は僕を見下ろして訊いてきた。 「僕はここでいいです。上に登るのめんどくさいですし」
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