ファースト アタック①

2/9
479人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
「なぁ、これ何だと思う?」 俺は目の前にある箱の中身を凝視しながら、前の席に座った豊川 修司(とよかわ しゅうじ)に声を投げた。 「ん?どれ?」 振り向いた修司が俺の指が示す方に視線を落とす。 「おお、すげーな。これは」 「やっぱ、そういう意味だと思う?」 「今日が何の日か分かってるだろ?他にどんな意味があるんだよ?」 修司は箱の中を「ほぅほぅ」感心しながら見ていた。 でも、でも! 「間違いってこともあるよな!?」 「まぁ、それもあるかもだけど、どうやって貰ったんだ?」 「手渡された」 「だったら間違えねーだろ」 うわー! やっぱ間違えねーか! 「にしても、これで陽向(ひなた)も彼女持ちか。おめでとさん」 彼女持ち? ぎゃー!!ふざけんなぁ! あいつが俺の彼女? ないないない、絶対ない! 俺とあいつが腕を組んで歩く姿を思い浮かべて、俺は慌ててかき消した。 「しゅうじ~」 「なんだよ?泣くほど嬉しいのか?」 「違うわ!その逆だ!」 そして俺はその箱から逃げるように教室を飛び出した。 机の上には20㎝四方の箱。 その中身は丸いチョコレートケーキ。 綺麗にデコレーションされたそのケーキにはハートのチョコに『I love you』の文字があった───。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!