479人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
「なぁ、これ何だと思う?」
俺は目の前にある箱の中身を凝視しながら、前の席に座った豊川 修司(とよかわ しゅうじ)に声を投げた。
「ん?どれ?」
振り向いた修司が俺の指が示す方に視線を落とす。
「おお、すげーな。これは」
「やっぱ、そういう意味だと思う?」
「今日が何の日か分かってるだろ?他にどんな意味があるんだよ?」
修司は箱の中を「ほぅほぅ」感心しながら見ていた。
でも、でも!
「間違いってこともあるよな!?」
「まぁ、それもあるかもだけど、どうやって貰ったんだ?」
「手渡された」
「だったら間違えねーだろ」
うわー!
やっぱ間違えねーか!
「にしても、これで陽向(ひなた)も彼女持ちか。おめでとさん」
彼女持ち?
ぎゃー!!ふざけんなぁ!
あいつが俺の彼女?
ないないない、絶対ない!
俺とあいつが腕を組んで歩く姿を思い浮かべて、俺は慌ててかき消した。
「しゅうじ~」
「なんだよ?泣くほど嬉しいのか?」
「違うわ!その逆だ!」
そして俺はその箱から逃げるように教室を飛び出した。
机の上には20㎝四方の箱。
その中身は丸いチョコレートケーキ。
綺麗にデコレーションされたそのケーキにはハートのチョコに『I love you』の文字があった───。
最初のコメントを投稿しよう!