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ことの発端は今朝のことだった。
「相沢センパイ、これ…」
朝の挨拶を交わすこともなく、目の前にきた男はズイッと箱を差し出した。
「は?くれんの?」
俺の問いかけに、黙ったままコクコクと頷く。
それを見て、俺は下駄箱から上靴を取ろうとしてた手を下ろすとその箱を受け取った。
なんか、めちゃ可愛くラッピングされてるんだけど。
「なぁ?これ何?」
「あ、振らんで下さい」
中の音を確かめようと耳許で振ろうとした俺の腕を押さえつけたその男は、急に顔を赤らめた。
え?
なに?この反応。
「こ、壊れるんで」
「お、おう。分かった」
今まで見せたことがないその反応に、俺も何だか恥ずかしくなる。
「で?マジで、これ何??」
「頑張って作ったんで!」
モジモジし出した目の前の男=部活の後輩の鹿島 岳(かしま がく)は逃げるように走り出して俺の前から姿を消した。
なんだったんだ、今のは…。
受け取ったばかりのピンクのラッピングのその箱を手にしたまま教室へと向かう。
自分の机にコトンとそれを置いて、俺は椅子に座った。
そして今に至る───。
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