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蘇我本家の大広間は近郊に住む分家の頭首たちが集まり、厳かに食事が進行している。 頭領夫人の誕生会というのに会食と呼ぶよりは“進行”という堅苦しさがある。 テーブルの上に飾られた花の華やかさも役に立たず、和やかな雰囲気には程遠い。 季節は十二月という冬季に入り、寒々とした薄曇りの日があたりまえになった。 背の高い窓から見えるその空の下にいるかのように、室内は暖房が効いているにもかかわらず、冷えた空気に躰がこわばっている。 それは蘇我特有の家柄とその頭領、蘇我唐琢の独裁者然とした所為だろう。 けっして怯えているからではない。
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