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「心配することはない」
「あたしは戒斗の目を信じてる!」
「それはつまり、自分がいちばんて思ってるってことか?」
「……あたし、いちばん?」
戒斗は身をかがめて叶多の耳もとに口を寄せると、帰ったら尽くしてやる、とつぶやいた。
年が明けて三十分後、戒斗の予告どおり、ふたりは陽たちに冷やかされながらさきに抜けた。
陽の場合、冷やかしというより皮肉っぽかったけれど。
「戒斗、おばさんから明日の夜……あ、もう今日の夜だけど、泊まりなさいってメッセージあった」
叶多から戒斗という順にタクシーを降りて、歩道のすぐ向こうにある鳥居を潜った。
例年どおり、初詣はアパートの近くの神社にした。
シークレットのカウントダウンライヴもそうだけれど、ここに初詣に来るのも三回めで、叶多は時がたつのは早いものだと年寄りじみてしみじみする。
「それで、うん、て云ったのか」
戒斗の声は渋くて不満げだ。
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