後悔

3/13
前へ
/30ページ
次へ
「千坂さんも運がないな。3.11では原発事故で、今度は核ミサイルだ」 隣家の佐藤老人が大きな声で言うと、「シッ!」とその娘がたしなめた。 長く放射線による被害に苦しんでいた千坂が、核攻撃によって他界したのは何らかの因縁なのか……。居合わせた人間は、同じように考えた。 「佐藤さんのおっしゃる通りです。夫の人生は、放射能と二人三脚で歩くようなものでした」 朱音は、ぽつぽつと語り始めた。 「3.11のあの日、全ては核の力でリセットされていたのです。でも、私たちはそれに気づかずに進み続けた。いえ、気づかないふりをした。政府が、陽射しの指す出口を見つけてくれると信じたのです」 朱音は、そこに政府関係者がいると知っていて、ゆっくりと参列者たちに眼を向けた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加