後悔

6/13
前へ
/30ページ
次へ
午後8時を過ぎると、近隣の客は帰った。残ったのは朱音の家族と2人の中年男だけだ。 男の内の1人は核物理学者で、今は廃炉システム開発機構の理事長を務めている岩城翔太だ。 朱音と岩城は学会などであいさつを交わす程度の関係で、数年前から仕事を依頼したいと岩城に面談を求められていたのだが、いつも断っていた。依頼は新しい生命の創造で、倫理的な問題を感じていたからだ。 今日、どこで葬儀のことをききつけたのか、突然やって来た。狡賢い戦略なのか、或いは、夫の導きなのか……、判断に苦しむ。 もう1人の男も、顔だけは良く知っている。民自党の白石栄一郎、日本国の総理大臣だ。 「千坂博士のおっしゃることは良くわかります。私もまったく同意見です」 白石総理が数珠の玉をいじりながら朱音の前に腰を下ろした。その隣に岩城理事長が座る。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加