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「手を上げてください」
哲明が静かに声をかけた。
「いいえ。了解していただけるまでは、頭を上げるわけにはいきません」
白石は、上げていた頭を再び下げた。
「今日は葬儀の席ですから・・・」
「葬儀の席だからこそ、お願いするのです。私の依頼は、亡くなった千坂さんにも了解をいただきたいのです。大切な奥さまを大変な仕事に引きずり込むことになるのですから……」
磐城は真新しい畳を見つめながら言った。真剣だった。誰かが毒を飲まなければ、廃炉作業は完結しないからだ。自分ができることなら、喜んで毒を飲もう。
しかし、今回ばかりは、自分の能力ではどうしようもできないと分かっていた。神は、能力を授けるという点に限って言えば、不公平な存在なのだ。それで何としても千坂朱音博士の助力が必要だった。
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