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視線を公園内に向け、花の下に敷物を敷いて食事を広げる親子に眼をやる。
陽気同様、なんと微笑ましい風景だろう。ここには桜にも負けない生命の営みがある。
千坂は、眼を細めた。
ワァンワァンワァン……突然、スマホの緊急避難情報の電子音が鳴った。
原子力発電所は遠かったが、そこで鳴るサイレンの音もはっきりと聞き取れた。
「地震?」
学生の頃、東日本大震災を経験した千坂は背筋が凍るのを感じた。
公園にくつろぐ人々も、ただ戸惑うばかりだ。
子連れの親は、自分の子供の名を呼んで抱きかかえ、不安そうに周囲に眼をやった。
誰もが地震を予想していて、ミサイルが飛んでくるなどと想像もしなかった。
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