花見前線

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「冷たい」  当日の朝、我々に襲いかかるようにそれはやってきた。花見の天敵。場所取りをしてきた猛者なら誰でも経験する悪夢。それだけで今までの努力を無に帰すそれは全ての兵士達に平等に降り注ぐ裁きに我々はなすすべなくただ耐えるのみ。それの名は…… 「先輩、大変です。雨が降ってきました」  焦っている新兵たちに私は鞄の中にある傘を渡す。そしてすぐに大きなビニール取り出し、新兵たちにひくように指示した。雨っか……果たしてこれがいつまで続くのやら……  そして、午後4時。まだ雨がやむ気配がなく、桜の下でお尻にタオルをひいて座ってると新兵たちはそわそわしながら待ち続けていた。 「先輩。そろそろやばくないですか?」  もう花見の場所取りを行っているのは我々だけという事もあって、新兵たちが不安になるのは分からないことではなかった。だが、まだ我々は諦めるわけにはいかない。
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