花見前線

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「私が言っているのはそういうことじゃない。周りは真面目にやってるように見えないかもしれない。だが、彼らは真剣に取り組んでいる。その証拠にそれを見ている人達は盛り上がってる。私が言っているのは堂々とやらずもじもじしてやるのと、中途半端でやってると相手にも伝わらないということだ」  私は新兵たちに出し物をしている人達を見るように指示をする。それを見た新兵たちは納得したような表情だった。これはお客様に対しても重要なことだ。相手に誠意が伝わらなくては契約なんてとれないからな。それから我々は周りの宴会が終わるまで、練習を続け何とかものになるまでに至った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「おはようございます。先輩」 「ああ、おはよう」  2日目の朝、眠そうな目を擦りながら起きた新兵Aは私に挨拶する。その挨拶を聞いた新兵Bは自身の任務を終え瞬く間に眠りについた。さすがに、昨日夜通し練習をして交代制で睡眠をとるなんて新兵たちにも堪えるだろう。  まだ春の暖かさが蔓延していない4月の上旬に持ってきた膝掛けを布団代わりに寝るのは冷える。布団が欲しいと思うが、そんな甘えを許されないのが花見前線。新兵たちが腰掛けを身にくるんで少し震える身体に申し訳なく思う。そして交代で全員の睡眠を終えた時、私は提案をした。
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