最初は3桁

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「おい、起きろ」 体を揺すられて義彦は目が覚めた。 「んん……ここは?」 彼の視界に映ったのは仕事仲間の達郎、そして鉄格子だった。 自分たちがいる部屋はおよそ4畳の大きさ。 独房のように狭い。 いや、まさに独房だった。 鉄格子の入り口にはダイヤル式の大きな鍵。 桁数は3桁あった。 彼は状況がわからなかった。 「義彦、お前は昨日のこと覚えてるか?」 達郎に言われ、彼は記憶をたどる。 拘置所から出られたことを祝して飲み明かしたのだ。 酔った後、夜道で電撃のような激痛が一瞬あった気がした。 「まさか……」 「義彦、あの爺さん本気だったみたいだな」 達郎の顔に怯えがある。 監禁される覚えが二人にはあった。 達郎はある富豪の家に忍び込み、鉢合わせた相手を殺してしまった。 家に火をつけて証拠を消したつもりだったが、警察も馬鹿ではない。 屋敷に電気工として入ったことのある義彦に目星をつけ、 実行犯の達郎にたどり着いたのだ。 しかし、決定的証拠がなく、二人は徹底的に容疑を否認した。 裁判は長かったが、最終的に二人は無罪を勝ち取った。 屋敷の主人は息子を殺されたことに怒り狂い、必ず後悔させてやると言っていた。 それを実行する意志と財力があの老人にあったのだ。 「携帯は……もちろん取られてるよな……」 義彦は所持品を確認したが、財布も何もない。 「そこの鍵、ダイヤル式だが何番なのかわからねえ」 「おいおい、たった3桁だろ……」 彼は相棒の頭の悪さにあきれた。 「000から999までたった千通りだぞ」 「……ああ、そうか。総当りで試すのか」 「楽勝だ」 彼はダイヤルを000にして引っ張ってみる。 開かない。 そこから鍵を引っ張りぎみにして001、002と数字を増やしていく。 設定された番号になれば開くはずだ。 1つに1秒かかるとして最大で1000秒。16分と少しだ。 彼は黙々とダイヤルを回し始めた。
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