準決勝

2/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 最終セットは相手ブレイク…  1番…2番…4番と、球が1つ1つテーブルから消えて行く。  (嘘だろ…このまま負けるのか?)  ビリヤードの試合は、相手がミスするまで何も出来ない。  ただ、黙って相手のミスを待つしかない。  椅子に座りひたすら自分の番を待っていると、自分の心臓の鼓動が聞こえる。  手にベットリと汗が滲み出ているのに気付く。  動いてもいないのに呼吸が荒くなる。  そうして、ただ黙って…ひたすら我慢して自分の番を待っていると、とうとう相手がミスをする。  5番ボール…しかもチャンスボールだ。  残りはたった5つ…  俺は椅子から立ち上がり、慎重にボールを落とし始めた。  5番…6番…7番と… 『はぁ…はぁ…』 (後2つ…8番をあそこに入れて、9番があそこだから、2クッション入れて…)  そう考えながら構えを取り、手玉を撞く。  …が… 『あ!』 『嘘だろ!?』  ギャラリーから歓声と悲鳴が上がる。  8番ボールは僅かにポケットから外れ…  相手に大チャンスボールが残った。  俺は数秒立ちすくみ、テーブルを見詰めていた。 (あんな球外すなんて…)  自分で自分が信じられない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!