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スタートダッシュ
その日の俺は、絶好調と言って良い状態だった。
栃木県ビリヤード界じゃ、5本の指に入ると言われながらも、タイトルと言えば、小さなハウストーナメントの優勝が1つだけ…
生来の短気な性格とあがり性が災いし、大事な大会になると、常にあと一歩で優勝を逃して来た。
それが、今回はホームグラウンドでの大会と言う事もあり、全てが上手く回っていた。
1回戦で優勝候補と目された相手を圧倒し、ほぼ完璧に近い内容で準決勝まで勝ち上がった。
プロを目指し始めて5年…今回もハウストーナメントとは言え、この大会には近県まで声を掛けていた為、50人以上の参加者が集まっている。
参加者には、先々月行われたプロのマンスリーで、ベスト8まで勝ち上がった人もいた。
なので、この大会で優勝出来れば、一気に名も売れる。
たかだか栃木の片田舎の有名人から、北関東の有名人にステップアップ出来る。
そう言う事で気合いも入っていた。
『あれ!平野君、1回戦でいきなり関口さんじゃん!』
そんな仲間の発言も、さほど気にならなかった。
『どうせ優勝するんだ。相手なんて誰でも一緒さ。』
そう答えていた。
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