5 微かな前触れ(続き)

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しかし当の先輩は、あまり気にしていないらしい。 「俺のお袋はさ、俺が中学に入って間もなく亡くなっててな。 元々病弱だったし、俺が小さい頃から入退院を繰り返してたくらいだから、 まぁ、それは仕方ないんだけどな」 そして彼が高校を卒業して程なく、父親が璃乃ちゃんの母と再婚したという。 「けどさ、本当は二人共、俺が中学を出るくらいの頃には出会ってたんだ。 だけど当時は、まだ俺が、難しい年齢、真っ只中だったからだろうな。 親父は、俺が成人するまで再婚する気はないって、 彼女の想いを、遠ざけてたみたいなんだよ」 しかし先輩は、隠しきれない二人の仲に薄々気付いていたらしい。 「今の嫁さんと親父、15も違うから、少しだけど俺の方が年が近いくらいでな。 でも彼女のほうが、そんな親父の気持ちも汲んで一途だったんだろうな」 だから彼は、大学入学と同時に、こっちを離れる決心をした。 そして、その時に、二人に結婚するように伝えたのだそうだ。
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