5 微かな前触れ(続き)

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「その頃には、彼女も、もう30超えてたしさ。 血の繋がりもないこんなデカい息子に義理立てせず、自分の子供も持って欲しかったんだ」 初めて聞く、彼の家族の話。 もちろん、いくら高校時代の先輩でも、 彼のことを、よく知ってるなどと私が言える訳もない。 しかも、そんな事を当時の彼が抱えていたなど、夢にも思わなかった。 だが、その一方で私は、すごく彼らしい決断だったとも思う。 そしてたぶん、この人の面倒見の良さは 少し普通とは異なった家庭環境と、 少しだけ複雑な青春時代からくるのかもしれない。 優しい面持ちで小さな璃乃ちゃんたちを見つめる先輩の横顔を ぼんやり眺めながら、私は、そんな事を思い浮かべていた。
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