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5 微かな前触れ(続き)
だが、私の心の呟きは、先輩には聞こえていたのかもしれない。
「悪いな、こんなんに付き合わせて」
なんかいつもの先輩と違って、力なく眉尻を下げている。
「いえ……」
私は、苦笑をしつつ首を振った。
だがその裏で、これでは、さすがの先輩も腰が引けたのも無理はないと思う。
「まぁ、この埋め合わせは来週するからさ」
ところが、この先輩の言葉で、再び「女子」たちの話がこちらに向いてしまった。
「『埋め合わせ』って、何ぃ?」
キョトンとした璃乃ちゃんの声が尋ねると、答えを真菜ちゃんがさらっていく。
「うちのパパがママに『埋め合わせ』っていう時は、ママに何かあげてるよ」
「えっ? じゃあ、お兄ちゃん、美羽ちゃんにプレゼントするの?」
「あっ、デートかもよ!」
「デート? でもデートだったら、今日だってそうじゃん」
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