第4話「されど故郷は遥かになりて」

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 だがあいにくと、リベレーターのエネルギーパックは残り少なく心もとなかった。それでも彼らを仲間だと認め、躊躇うことなくGペンを握る。 「任せて。とびきりのを描いてあげる」 「すみません。ぼくも協力したいのは山々ですが」  鳥嶋が情けなさそうな表情で詫びた。文字しか操れぬ自分は非力だと。 「そんなことないよ。鳥嶋にもできることはあるから」 「ぼくに……ですか?」 「ああ。鳥嶋も立派な戦士さ」  Gペンで武器を描きながら、頼もしそうに笑いを返した。  仲間に新たな武装を施すと、〔捕食する影〕が蠢く回廊に続く扉を開けた。こうしている間にも、テレーゼは助けを待っている。  もう漫画を出版することも、犯罪歴が抹消されて自由になることも念頭になかった。戦う理由は、自分を慕う少女を救い出すことで十分だ。それ以上の動機は、戦いに向かう自分にはお荷物になる。 「テレーゼを必ず救出する」  イチジクは〔キノメアの海〕へと続く回廊に足を踏みだすと、もう振り返ることなく戦場へと足を速めた。
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