第4話「されど故郷は遥かになりて」

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 歩を進めながら仲間を眺めると、二次元オタクの生き残りが2名、小説に造詣が深い編集者が1名、その上司でいちばん戦力外の室長が1名、それよりもマシだが武器をもたぬカルチャノイドが1体だ。戦地に赴くのに、これほど異色な取り合わせはないだろう。  かくいう自分は、最後の漫画家を自称する眼鏡っ娘ではないか。緊迫した場面でなければ吹き出しそうな面子だな、とふつふつと笑みがこぼれた。 「役立たずですよね」フリントが自嘲する。「せめて皆さんのように武器が使えれば……」 「仕方ないさ。ホログラム変異現象の要になる同一化能力を持っていないからね。 あんたには想像力が備わっていないから、逆に思考の実体であるキノメアを喰らう〔影〕に襲われないはずだよ」 「それがせめてもの救いですかね」なぜか哀しげに眉を曇らせた。 「フリントも仲間だよ」  テレーゼを救出すると名乗り出てくれたのだ。彼も大事な戦友である。無下に死なせるわけにはいかない。 「おいおい、様子が変だぜ」  碇が声をひそめて言うので見ると、遠くの回廊出口にはびこる〔捕食する影〕が奇妙だった。
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