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胸部から両断された〔殺戮の影〕の眉間に、“傷の疼きを感じたことのない者だけが、他人の傷痕を見てあざ笑う”という言葉の矢が貫通する。
「嗚呼……」あまりに酷い光景に言葉を失う。「もう2人を後退させて!」
そこを〔殺戮の影〕が襲おうとすると、フリントが身を挺して防いだ。たたらを踏む巨大蜂だが、続けざまに鳥嶋の矢が射貫いた。
「い、いいから、おれらに構うな」
激痛で痙攣する碇が声を震わせた。
「そ、そうだよ。ここは映画の定番で、仲間を先に行かせる場面さ」
ショック状態で顔色が紙になった照屋が意地を張る。
そうしている間も弱った獲物に止めを刺そうと、〔殺戮の影〕の群れがじりじりと距離を詰めてきた。
「そんなこと……」
イチジクは逡巡の表情を浮かべるが、それを無視するかのように碇が盾槍を床に据えてバリケードにした。
そこに照屋が仕込み鞭を壁にめり込ませ、盾槍のバリケードにチェーンソーの鉄条網で補強する。文字どおり瀕死の2人が鉄壁と化し、狭い回廊を塞ぐ防護壁をきずいたのだ。
瀕死の獲物を取り逃がして、怒りの号哭をあげる〔影〕の狩人たち。
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