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「実体化が解ける前に、早く!」
命が尽きる前に辿り着けと言うが、彼らを見殺しにしてはいけないと胸で良心が叫んだ。
「イチジクさん、行きましょう」
フリントと鳥嶋の声に促されて、よろめくように背中を向けると涙をはらい駆けだした。
遠くなる4つの足音を耳にしながら、碇が地べたにつっぷして鼻の絆創膏を掻いた。
「こんな男ですまねえ」
「まったく、ろくでなしだよ」
照屋が眼をうるませて、男の胸に顔を埋めた。
耳をつんざく咆哮のなか、2人の男女が静寂の彫像と化した。
細く長い回廊をひた走ると、やがて最端にある扉の前に立った。〔極秘実験施設〕と刻まれた扉だ。
イチジクたち3人と1体は激闘の涯て、ついに目的地である〔キノメアの海〕に辿り着いたのだ。
だが扉は施錠されていて、いくら叩いても頑として開こうとしない。
「鍵を開けてくれたまえ」
黙々とついてきた冬馬が指示するので、鳥嶋は言葉の鍵で扉を開いた。
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