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重い扉を押し開いて足を踏み入れると、なぜここが〔海〕と呼ばれているのかを眼にした。
広大で円形な実験室の満たすように、湖のように蒼い水をたたえたプールが横たわっていた。その水面がきらきらと輝いて、神秘の光で施設内を満たしていたのだ。
その〔キノメアの海〕を浸食するように、不定形のアメーバーのような漆黒の影が覆っていた。
「まさかこれが、ホログラフィック・ユニヴァースに繋がっているのか……!?」
イチジクは脊髄に戦慄が走るのを覚える。
「いずれにしても施設の暴走を停めるのが先決です」
すでにフリントが制御パネルを操作していた。頼れる相棒である。
ほっと安堵の息を吐いて、テレーゼの姿を探そうとした刹那だった。
「危ないッ!」
鳥嶋が叫ぶよりも早く、1発の銃声が心臓を叩くように轟いた。
「鳥嶋……?」
あまりの展開に虚ろな声をもらすと、倒れ伏して背中から血を流す鳥嶋の姿が眼に映った。
「禁止品で悪いが使わせてもらったよ」
冬馬が黒鉄色に鈍光る拳銃を構えながら言った。
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