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「僕はケイスケだよ」
あなたは言いました。
時々、散歩へ行こうと私を外へ連れ出してくれます。
近所の公園を手を繋ぎながら歩きます。
春は、まろやかな風が花弁を散らしていく桜並木を。
夏は、ゼリーのように陽の光を揺らす池の周りを。
秋は、高い空にぴんと背筋を伸ばした黄金色の銀杏並木を。
冬は、儚い雪の華を枝の先まで咲かした冬木立の間を。
あなたは、たまに、私が忘れていたような昔の話をします。
小さい頃、泥だらけになりながら走り回っていたことや、捨て犬を近所の空き地でしばらく面倒を見ていた事や、夏祭りでいつも食べてた焼きそばの味の事とか。
昔からあなたの声を聞くと落ちつきます。
あまりに穏やかで、うとうとしてしまうくらいに。
あたたかな毛布みたいな人です。
この人となら、百年先の未来がどんな世界でも、翼で包まれているように安心できてしまう、そんな気がするのです。
だけど、わかります。
あなたは、ケイスケではありせん。
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