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◇
「――――はい。はい……大丈夫。凄く綺麗ですよ」
「…………」
志朗の目の前で、夜緒が桜に向かって……いや桜の『影』に向かって話しかけていた。頭痛、寒気、耳鳴り……それから、胸のざわめきを感じながら、志朗は夜緒が見る先にぐっと目をこらしてみる。
今まで幽霊や妖怪変化の類を見た事は無いが、その存在を知った今なら見える気がした。
「勿論です。あなたは、永遠に美しい」
夜緒がそう告げた瞬間、志朗は笑みを浮かべた着物の女性が見えた気がした。泡が解けるように消えていく彼女を見届け、言う。
「……成仏したのか」
「じ、成仏とは、ち、違うと思います。あの人は満足しただけ……感情は、な、なくならない、から……」
「ふぅん……それにしても黒川。『影』相手だと普通に喋れるんだな」
「か、『影』は、わたしに、に、似てる、から」
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