黒川夜緒と桜の影

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 夜緒はひょこひょこと木陰から出てきた。志朗の目の前に出てきてはいるものの、一定の距離を保っている辺り、未だに警戒はされているらしいが。  ふるふると震えながら俯き、自分を護るように身体を掻き抱くその姿に、何かイケナイ気持ちが沸き上がってきたが、志朗は頭を振ってそれに封をした。 「あのさ」 「は、はい」  口を開こうとした瞬間、頭に警告の言葉が過ぎる。  ――これは訊いても良いことなのか?  しかし、出かけた言葉を引っ込めるには、制止するのが少々遅い。 「お前今『何』と話してたんだ?」 「それ、は」  夜緒の身体の震えが激しくなった。浅い息遣いが聞こえる。地に落ちた雫は涙か汗か。後ずさりした彼女を、志朗は発作的に呼び止めた。
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