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「何か考えが?」
「あ、ありません、けど……や、やらなきゃ、いけません、から」
「それは仕事?」
「い、いえ、その、お給金が出たりとか、は……わ、わたしが、個人的にやっていることで……」
「仕事でもないのにどうして」
「か、可哀想だから……」
「!」
志朗は、雷に打たれたような衝撃を受けた。
可哀想? 可哀想だって? なんだそれは。桜が? 彼女は桜が可哀想だといったのか?
それは――それは、なんて。
「怒ったり、悲しんだり、するのは辛いです、から……そ、それに、わ、わたしにしか、出来ません、し……」
なんて、優しい考え方だろう。まるで幼子のような純粋さ。志朗はどうしようもなく感動していた。
心の平静さを失っていた彼は、ほぼ衝動的にこんな事を口にしていた。
「俺にも手伝わせてくれないか」
夜緒の示した反応は案の定困惑だった。それは遠慮なのか、単なる拒絶か……しかし、志朗には手伝うべき理由も手伝いたい欲求もあった。
「俺に考えがあるんだ。任せてくれ」
「か、考え……?」
「あぁ。桜の願い、叶えてやろうじゃないか」
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