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「旦那様!」
モーリスはまだ何か言い足りないようだ。ルナの月経日を迎え、たっぷりと栄養を補給したグレイに比べ、ルナはどことなく痩せ細ってしまったように見える。
「いくら溢れるほどちゅうちゅうちゅうちゅう吸血三昧だからとて、ルナ様には毎日ちゃんとした人間の食事を取っていただかないとまた倒れてしまいますよっ…」
自分の為を思ってのことなのだろうが、ルナはモーリスの言葉に赤面しながら下を向いた。
背中を向けた背後からまくし立てるモーリスをグレイはもう一度くるりと振り返る。
「すまなかった。次は気をつける」
そしてあっさりと詫びた。無表情のままではあるが、グレイがこんなに素直に謝ったのは始めてのことだ。
モーリスは主人のその変わり様に幾分か拍子抜けしたように言いかけていた口を開けたままだった。
「わ…わかっていただいたのなら何も申し上げることはございません。次回からはちゃんと間で休憩をお取りくださいませ」
モーリスは言いたいことの半分も言えず何処かしらすっきりしない表情を眉間に刻んだまま厨房へと引き込んだ。
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