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ルナはカップに口を近づけながら向かい側に座るグレイをこっそりと盗み見た。
相変わらずの冷めた表情、感情のない瞳でグレイは新聞を読んでいる。
「もう少し蜂蜜を足しますか?」
すりおろし果実の皿を並べながら、加減を尋ねるモーリスにルナは慌てて首を横に振った。
「ちょ、丁度いいわ」
また目の前で蜂を握り潰されては困るとルナは逆に機嫌を取るような愛想笑いを返した。
モーリスは少し言葉を濁しながらこんがりと焼かれたラスクをルナの前に置く。
「仲の良いことには何も言うことはございませんが…」
ちらりと主人に目をやる。そして嫌みを含んだ咳払いを一つすると続けた。
「…しかし、三日三晩も寝室にこもりっきりは如何な物かと」
グレイはモーリスの視線を遮るように新聞で顔を隠す。ルナは口に入れたラスクの欠片を喉に引っ掛けて咳き込んだ。
「旦那様。聞いていらっしゃいますか?」
新聞の前に顔を挟み、モーリスは主人の顔を間近で覗き込む。
グレイは近過ぎるモーリスの顔を呆れた表情で見るとそれを遮りくるりと背中を向けた。
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