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初めてこの館へと連れて来られた日。その時にまとわりついていた澱んだ空気も嫌で嫌で堪らなかった。だが今は何とも思わなくなっている。
さすがに魔界の森の異質さには馴染めそうもないが、ルナはこの土地に自分がいつしか違和感を感じることが少なくなっていることに気づいていた。
それでも一人になると音のない世界にポツンと置き去りにされたように寂しさが溢れる。
使用人として住み込みで働き雑用にコキ使われ、忙しかった頃の喧騒も、静かすぎるこの館に来てしまえば懐かしくも感じる。
「皆どうしてるんだろう…」
ルナは庭を歩きながら小さな独り言を呟いた。
たとえ雑用係りの娘だとて、急に居なくなってしまえば普通でも気になるはず。皆、自分のことを捜しただろうか。
それとも、仕事が嫌になって逃げ出したと思われただろうか。ルナはそんなことを考えながら、内庭から玄関の方へと足を向けると門前に佇んだ。
数日前、ルナが逃げ出したままの状態で内錠が外れている。
でももう、ここを出る勇気はない。
昼だというのにやはり、門の向こう側はどんよりとした闇が覆っている。
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