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何もいないことを確認し、正面に続く廊下を進もうとしたとき、その正面の廊下からピンクの何かが不意に現れた。さっきのキグルミの色違いだ。今度はうっすら透けてはいない。はっきりと見えている。歯をガチガチ鳴らしながらこちらに向かってくる。自分を狙っていることは明らかだ。
革ジャン男の最後が脳裏に浮かぶ。最期の時の骨が砕ける音が脳内で再生される。
途端、膝に力が入らなくなる。だが、ここで動かないとあの男の二の舞いだ。
必死の思いで足を動かし、図書室に戻ろうとして振り向くと、そこにはさっきの水色のキグルミがこちらに向かってきていた。
(うそだろ。)
選択の余地はない。先が暗くて見えなかった廊下へ逃げた。すぐに突き当りの壁が見えた。廊下は両側に伸びている。
(右だ!)
突き当りの壁に左手をついて速度をなるべく落とさないように右に曲がる。
すぐ右に扉があった。つんのめりそうになりながら止まり、ドアノブを掴んで回した。
【ガチャガチャ】
(くそっ)
鍵がかかっていて開かない。蹴破ることも考えたが今はここから逃げることを優先した。
廊下はまっすぐ伸びているが所々で左右に分かれている。
最初の角を左に進む。スピードはそんなに落とさずに曲がったものの、その先の廊下はまっすぐで、見える範囲では両側に扉も全く無い廊下だった。
(しまった)
しかし戻るわけにはいかない。
そのまま全力で進みやっと30mくらい走ったところで突き当りが見えてきた。突き当りはまた左右に分かれている。
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