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このチャンスを逃すわけにはいかない。人生最速の猛ダッシュで追いつき上段から剣を振り下ろす。手応えは殆ど無かったが、切断面がはっきり見えている。血のような液体は流れていなくても効果があるのは間違いない。
直後青いキグルミは風船のように膨らんでいき、最後は音もなく破裂し四散した。
(よし、いける)
振り向くともう一匹のキグルミも角を曲がって視界から消えかけていた。走り寄って今度は剣をまっすぐ中心に刺さるように突いた。突き刺して2、3秒経つとさっきと同じように破裂音もなく飛び散った。
さらに数m先の角を曲がろうとしていたキグルミが見えた。しかしそのキグルミは青色ではなく、青・白と点滅を繰り返すように色が変わっていた。それでもチャンスと見ていた達也は、キグルミが曲がった角まで突進した。だがそこには青・白と点滅し情けない目をしたキグルミではなく、最初に革ジャン男を食ったのと同じ赤色のキグルミが居た。
飄々とした視線で達也の剣にはお構いなしにこっちに向かってくる。達也は持っていた剣を振り回したが、さっきまでのようにキグルミにダメージを与える感覚は全くなかった。剣が通り抜けているのだ。本で殴ろうとした時と同じ感覚だった。剣もさっきまでの光を失っていた。
達也はずっしりと重い剣を投げ捨て、今来た廊下を逆に走り出した。また逃げなければいけない。
(剣はもう一本なかったか?)
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