本編

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図書室には天井まで届きそうな3mほどある背の高い本棚が、5m四方くらいの部屋の壁に隙間なく並んでいた。部屋の中央にはテーブルと一脚の座り心地が良さそうな椅子。本棚には本が隙間なく並んでいる。それもすべてが同じシリーズの本のようだ。一見同じ本が並んでいるかのようだ。 (百科事典か?) 目を凝らすと背表紙には年号を含む日付と思われる数字の組が<<~>>の記号の両側に書かれている。 (日記?いや・・・) 日付が正しいとすれば20年近く前の年で、一月ほどの期間のものということになる。 (全ての本が一月分となると、何年分になるんだ?) 手にとって開いてみた。 そのページはすべてピリオドで埋め尽くされていた。 (なんだ、これ・・・) ページをめくってみたが、どのページも同じだった。 (日記じゃないのか。なんの本だ?) ふと顔を上げ本棚を見る。 (まさか全部同じ?) そんな考えがふと浮かんだが、すぐさま否定した。そんな意味のない内容の本なんてあるわけがない。 背表紙を眺めていると期間が一月に満たない、一週間くらいの短い本があった。 手にとって開いてみる。 最初はピリオドで埋められていたが、しばらくすると文章が書かれていた。 「こんばんわー」 「返事がないね」 「どうする」 「うーんどうしよう」 (なんだ、これ・・・) 二人組の会話のようだが、その他にはなにも書かれていない。会話のみだ。 (なんでこんな会話だけの文章なんだ。これじゃあ状況が全くわからないだろ。)     
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