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続きを読もうとページをめくった時、図書室の外から叫び声が聞こえてきた。
【助けてくれー】
達也は本を放り出し、図書室を飛び出した。男が長い廊下からホールに向かって走ってくる。
後ろを振り返りながらだったので足が縺れて達也の目の前でコケてしまった。
黒い革ジャンに無地の白いシャツを着たその男は、立ち上がることもなく仰向けになって手を着きながら後ろに下がろうとしている。黒のジーンズが濡れているためか、大理石の床には濡れた跡がついている。革ジャン男の視線は長い廊下の先に向いている。その目はこれ以上ないくらい見開かれていた。
【た、た、】
達也は男の視線の先に何がいるか目を凝らしてみたが、何も見えない。
【大丈夫ですか?】
達也が声をかけると男は一瞬だけこちらを見、再び視線を廊下に戻した。
【は、早く逃げろ】
革ジャン男はそう言うと体をひねり、四つん這いの態勢になり、さらにクラウチングスタートの要領で逃げ出そうとした。しかし男は動くことができないらしい、足が動かない様子だ。
【あ”あ”あ”あ”あ”あ”】
叫び声なのかわからない声を出しながら革ジャン男は振り向いて自分の動かない足を見ている。
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