本編

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目を凝らすと、巨大な水色の指サック、例えれば一時期人気を博したキレキレの動きをする船橋市非公認のキャラクターのようなキグルミが男の足にかぶりついているように見えた。ただそのキグルミは透けて見えているので現実感が全くない。CGを見ているような気分だった。 (何だ、こいつは?) キグルミが口を開け閉めするたびにバリッボリッと何かが砕けるような音がし、キグルミの口を赤いなにかが満たす。 すでに膝までキグルミの口の中に入っていた。革ジャン男は目を思いきり開いていたが、腕立ての状態から一気に力が抜けたようにうつ伏せになった。 キグルミはお構いなくバリッボリッと音をたてながら男を飲み込んでいく。 達也は後ずさりしたが、すぐに図書室の扉に阻まれた。しかし達也は異常な光景から目が離せず、それ以上動けなくなっていた。 革ジャン男はうつ伏せのままだったが、とうとう頭までキグルミの口の中に入った。 やっと我に返った達也は持っていた本でキグルミに殴りかかった。しかし振り下ろした本はキグルミに当たらない。距離は十分届いているのだが突き抜けて手応えがまったくなかった。勢い余ってバランスを崩しそうになったが、右足を一歩踏み出し倒れることだけは免れた。しかし前かがみの態勢になってしまったため顔がキグルミのすぐ近くまで寄ってしまった。 キグルミは不意にこちらに向いた。身長の1/3は占めている巨大な目の中のダチョウの卵大の黒目がこちらに向く。目が合ってしまった。 (やばっ)     
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