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しかしキグルミの視線は革ジャン男が今来た廊下に向き、からだもその方向に動き始めた。
達也は一歩踏み込んだままの体勢のまま、キグルミの姿が段々と薄くなる様子を見ていた。
安堵感で緊張が溶け、そのまま図書室の扉を背にへたり込んでしまった。
(何なんだよ、これ)
達也は大きく深呼吸した。そして冷静に状況を把握しようと考えた。
(革ジャン男はきっとピックアップトラックの運転手だ。)
(あいつも雨宿りしに建物に入ったに違いない。)
(なぜかわからないが、あいつはキグルミに襲われた。)
(だが自分は襲われなかった。)
(ただしこの後も襲われないとは限らない。)
革ジャン男の最期を思い出し、身震いした。
(逃げないと)
幸いまだ建物の奥に入っているわけじゃない。玄関ホールのからすぐ隣の図書室の前だ。すぐそこに玄関の扉が見える。一旦キグルミが消えた方向を見て何も近づいていないことを確認すると、小走りに玄関に近づいた。ホールが見渡せる所に来た時、ホールの階段やバルコニーも確認したがキグルミはいなかった。
(よし、大丈夫だ)
ノブを掴み回そうとした。が回らない。
ガチャガチャと音が虚しく響くが一向に回らない。
ノブを掴んだまま前後に動かしてみたがびくともしない。
(なんでだよ)
ふと後ろに気配を感じた。
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