本編

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土砂降りの雨が降り続いていた。ワイパーの速度を一番速くしていても前方が見難い。 達也は、天気が悪くなるのがわかっていながら峠越えを決めた1時間前の自分の判断を嘆いていた。 (ツイてないなぁ) ハンドルを握る左手にも力が入らない。視界不良で速度も出せないが、舗装されてない山道ではなく最近開通したような、ガードレールも整備されたしっかりした舗装道路であったので気が緩んでいるのだ。前後には車が無く、対向車も全く通らない。そりゃそうだ。こんな天気に車を走らせるやつなんていない。 雨が叩きつける単調な音しか聞こえない。天気予報を聞こうと、達也はラジオをつけた。投稿はがきが読まれたり流行りのJ-POPが流れたりしたが、一向に天気予報を流さない。 (使えないなぁ) 仕方なくそのままラジオをつけっぱなしにした。 【ガタンッ】 車が少し跳ねた。 気がつけば、さっきまではしっかり舗装されていたのに、ところどころ亀裂が目立つような荒れた道路になっていた。ずっと続いていたガードレールもいつの間にか無くなっていた。 (一本道だったから、間違えたわけじゃないよなぁ)     
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