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桜さくら
桜の花が、一面に舞っていた。
儚くも美しい、散り行く花びらの舞。
「次は板橋、板橋」
事務的な車内アナウンスが聞こえる中、芳樹は読みかけの本を閉じてカバンに放り込んだ。
芳樹の住むアパートは、板橋駅から徒歩十分くらいの場所にある。
ワンルームでたいして広くもないが、新築で綺麗なアパートだ。
家賃も安い。
どうせ、帰ってシャワーを浴びて寝るだけの場所だから、こだわりはないが、どうせ家賃を払うなら、安くて綺麗な方がいい。
電車を降りて、駅近くの店で食事を済ます。
家に帰ってカップ麺でもいいが、作るのも片付けるのも面倒くさい。
味気ない食事を終えて、家に帰る。
服を脱いで、そのまま洗濯機に放り込み、スイッチを入れる。
シャワーの水流は、体にこびりついた一日の汚れとともに溜まった疲れも洗い落としてくれるようだ。三十分近く浴び続けて、さっと髪と身体を洗ってあがる。
洗濯機はまだウワンウワンと唸っていた。
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