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「先生たちは……見て見ぬふりです。一応進学校なので、そういう面倒事は嫌みたいです。親には心配をかけたくないので……言えません。」 「だけど大人の力も借りた方がいいよ。こんな怪我させられてるんだから。」 「だ、だけど……い、言えないことが……。」 「なに?万引きとかさせられた?」 「いえ…………あ、あの……あ……。」  口にするのが恥ずかしくて、情けなくて、言葉が途切れる。ガラス窓に映った自分の顔は笑えるほど真っ赤で、それがまたいたたまれなかった。  白金君は僕の背中をさすりながら言う。 「俺も啓一も何聞いても軽蔑したり馬鹿にしたりしないよ。もちろん、人に言いふらしたりもしない。だから喋っちゃいな。一人で溜めこむことないよ。」 「…………で、でも……。」 「大丈夫。ね?」  背中に触れる手の温もりのせいなのか、それともきらきら光る銀髪に見とれてしまったせいなのか、僕は言うつもりのなかったことを打ち明けるために口を開く。 「レイプ……されてるんです……。」  二人の表情はみるみるうちに固まり、白金君の手が止まった。 ―――やっぱり引かれた?  言われたことを鵜のみにしてとんでもないこと喋ってしまったのかもしれない。少し考えれば、僕が今口にしたことは軽々しく人に話してはいけない類のことだとすぐに分かる。 ―――どうしよう。 いくら親切にしてもらったからって、この二人とは今日が初対面なのに。 「す、すいません、僕……あの、気持ち悪いですよね。わ、忘れてください。」 「……一回だけ?それとも何回も?」  微かに震える声で白金君が尋ねてきたので、僕は半ばやけくそになって正直に答えた。 「去年の夏くらいから何度もです。数えてないので回数は分からないですけど。」  本郷君は白金君をちらっと見てから僕に言う。 「そのことも人には言ってないんだ?」 「は、はい。男なのに男にレイプされてるなんて言えなくて……そ、それに大丈夫です。もう慣れましたから……お、男だから、妊娠もしないですし!」  無理矢理明るく言った僕の背中から手を離し、白金君は俯いたまま席を立った。 「ちょっと……顔洗ってくる。」
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