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 紐の痕が幾重にもついている僕の手首をじっと見ていた銀髪の人はそっと手を離し、うすっぺらなクラッチバッグの中身をごそごそと掻き回す。 ―――このバッグがスクールバッグ代わりなのかな? 教科書とかノートとか入らなそう……。  僕がそんなことを考えているのをよそに、銀髪の人は鞄の中で何かを探し続けていた。そして急にぴたりと手を止めると、にっこり笑って何かを僕に差し出す。 「ラッキー、二枚だけあった。」 「あ……こ、これ……?」  差し出されたのは花柄の絆創膏だった。ピンクと水色の綿菓子のような色をした絆創膏に戸惑っていると、銀髪の人は絆創膏の袋を無造作に破り取って、僕の手を取った。 「ほら、袖まくって。」 「え?あ、は、はい、すいません。」  言われた通りに袖を引っ張り上げると、血が滲んでいたところに絆創膏がぺたりと貼り付けられる。血色の悪い肌と明るいピンク色のコントラストはなんだか奇妙だ。 「従姉妹からもらったやつだからやたらと可愛い柄だけど、別に気にしないでしょ?」  僕の返事を待つこともなくもう一枚の絆創膏を傷の上に貼り付け、銀髪の人はにっと歯を見せた。 ―――意外と人懐っこい笑顔……。 「す、すいません。ありがとうございます……。」 「ん、どういたしまして。」  銀髪の人は再び僕の顔をじっと眺め、それから唐突に言った。 「その制服、北高のだよね?」 「あ、はい。そうです。北高です。」 「頭いいとこだ。」 「蒼秀学園のほうが偏差値高いです……。」 「えー、そうだったー?でもあれじゃん、男子校仲間。」 「は、はい。」 「女子がいなくて残念?」 「え?あ……べつに、どちらでも……。」 「まあ、男子校は男子校で楽しいもんなぁ。野郎同士気兼ねなくつるめて。で、あっちにいる北高制服の三人組は君の友達かなにか?」  反射的に振り返りそうになって、僕はぎりぎりのところで踏みとどまった。 ―――「こっち向いたら殺す」って言われてるんだった。 「い、いえ……ち、ちがいます……知りません。」 「ふーん。でもあの三人さっきからずーっとこっち見てるよ?しかも三人で仲良く一つのスマホ覗き込んで。」 「ぼ、僕、知りません。あの、本当に、違うんです。」 「へえ、そっかぁ。」
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