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―――え?  吃驚して声が出せない僕に気がついた残りの二人も、急に勢いづいて言った。 「そうそう、そいつが言いだしたんです。」 「ちょっとからかってやろうって。」 「俺たちはとめたんすよ?」 ―――そうか、僕に罪をなすりつけて逃げるつもりなんだ。 本当は違う。 全然違う。 「『僕とセックスしてください』って声かけて来い。やらなきゃ殴る。」って脅されて、仕方なく声をかけたのに。 だけど……それをここで言ったら、後でまた殴られるはずだ。  すると、何も言えないまま俯く僕の頭を三人のうちの一人が思い切り叩いた。 「っ痛い……!」 「おい、お前謝れって。」 「そうだよ。なに俯いてんだよ。」 「お前が言いだしたんだろ。おい、何とか言えよ!」  三人の中で一番立場の強いやつが、そう言いながらもう一度拳を振り上げた。僕はぎゅっと目をつぶって身構える。 ―――大丈夫、痛いのは一瞬。  いつからか頭の中でこう唱えることが癖になっていた。 ―――大丈夫、痛いのは一瞬。  ところが、いつまでたっても拳はふってこなかった。不思議に思って恐る恐る目を開けると、銀髪の人が僕に向かって振り下ろされるはずだった手を掴んでいた。 ―――え……? なんで?  戸惑う僕同様、三人組も戸惑っていた。全員顔が強張り、目が泳いでいる。とくに腕を掴まれているやつは今にも逃げ出したそうに腰が引けていた。 「誰が言いだしたかなんて聞いてねえよ。俺が聞いたのは『なにしてたの』だろ?お前らがなにしてたか聞いてんの。」  そう言いながら銀髪の人があまりに綺麗な顔で笑うものだから、三人はぽかんと口を開けたまま数秒の間硬直した。垂れた目尻を眇めてほほ笑むその顔はたしかにとても綺麗なのだが、全身を氷漬けにされそうな迫力がある。笑顔を向けられていない僕でさえ、思わず生唾を飲み込んでいた。  三人はじりじりと後ずさりして、互いの顔を不安げに見やった。誰もが何かを言いたげな表情だったが、何も言えないどころか声すら出ないようだ。銀髪の人は大きな舌打ちをすると、シルバーリングがはまった指をパキッと鳴らす。  その音にびくっと震えた三人組はもごもごと言い訳らしきものを口にした。しかし銀髪の人はその言葉をまるで聞いていないようで、薄ら笑いを浮かべながら三人組をじっと眺め続ける。
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