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―――物騒なことや乱暴なことを言うより、黙って笑っている方がずっと怖いんだな……。 大声で強そうなことを言うやつは結局のところ自分より弱い人間にしか強く出られないと聞いたことがあるけど、まさにその見本を目の前で見せられている気分だ。 「おい、冴。」  いきなり新しい声が僕たち五人に間に割って入ってきたことで、銀髪の人が凍らせた空気が溶けた。三人組ははっと我に返り、新しい声の主のほうに視線をやる。僕もつられるようにして声がしたほうを見て、すぐに後悔した。 ―――また怖い人が増えた……。  銀髪の人の隣に立ったのは、蒼秀学園の制服を着た背の高い人だった。髪をハーフアップに結び、前髪には赤いメッシュが入っている。そのうえ、耳と左眉の眉尻にピアスが開いていた。鋭い目つきと表情の乏しい顔からは何を考えているのか察することができず、笑顔が怖い銀髪の人とは対照的だ。もっとも、「怖い」ことには変わりがないけれど。 「あ~!啓一おせえよ~。」  銀髪の人は「啓一」と呼んだ背の高い人の背中をばしばしと叩いて、人懐っこく笑った。それはさっき僕に見せた笑顔と同じ笑顔だった。 ―――冴って言うんだ、この人。  「冴」に「啓一」と呼ばれた人は三人組と僕を見て、それから「冴」を見てため息をついた。 「なに、こいつら。」 「よく分かんなーい。暇なんじゃない?」 「まあ、お前にわざわざ絡んでるんだから、そうなんだろうな。」  「啓一」は三人組を見おろし、冷めた表情で言う。 「こいつに喧嘩でも売ってるなら、俺がかわりに買うけど?」 「や、喧嘩とかじゃないんで……。」 「ちょっとした誤解があっただけっす。本当に。」 「俺たちもう帰るんで。おい、行こうぜ。……お前も来い。」  三人組のうちの一人が僕の手首を掴む。絆創膏を貼ってもらったところを上から思い切り掴まれ、鈍い痛みに顔が歪んでしまう。声をあげたら殴られると思い、歯を食いしばって痛みに耐えたが、それでも呻き声が漏れてしまった。 「はーい、ちょっと待った。」
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