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「ずっとお前がこの町に戻るのを待っていた。忘れたのなら思い出せ」 にいなの頬に触れると狐は額にそっと口付けた。狐の流した涙がポタリとにいなの顔に落ちた。 「必ず思い出せ、いいな?」 「……一応、努力してみる」 必死な狐が可哀想になってそう返事をしたけれど、思い出せる自信はあまりなかった。 会っているのだとしたら、この土地にいた幼い頃だろう。そんな小さい頃の事、覚えてる方が凄い。 「うん、待ってるぞ」 やっと涙を止めた狐は嬉しそうにニコリと微笑んだ。 「それじゃ、帰るから。さっきは助けてくれてありがとう」 立ち上がって狐から離れようとすると、狐はにいなの腕に掴まって尻尾を腰に絡ませてきた。 「オレも一緒に帰る」 「はあ?なんで?」 「夫婦なのだから当たり前だろう?」 「いやいや、夫婦じゃないし」 いつの間にそんな話になったのか。さっき、嫁にはならないと告げたばかりなのに。 「にーな、お前は昔から妖によく狙われる体質だ。だからオレが守る。嫁を守るのは夫の勤めだ」 「いや、だから……」
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